2011年4月13日水曜日

ヤマネ生息調査用の巣箱開発

2006年からヤマネ生息調査用の巣箱開発を行っています。
ヤマネを狙う捕食者による齧破を防ぎ、巣穴からの進入を困難にした巣箱です。

開発した「塩ビ管巣箱」















塩ビパイプとVUキャップを巣箱本体に使用し、耐久性を向上させ、捕食者による巣箱破壊の危険性を低減した巣箱です。
巣穴はツーバイフォー材(厚さ38mm)の木口に開け、簡単には広げられないようにしてあります。
巣箱自体が軽量(300g)でコンパクト(容積500cc)のため、取り付ける樹木に負担が無く、取り付け用の被覆針金も1本で済みます。

塩ビ管巣箱を開けた状態
















巣箱を開けると、コケ類・樹皮の巣材が入っています。
巣穴はツーバイフォー材の中で直角に屈曲しています。

上記の塩ビ管巣箱は「小型ヤマネ科動物用巣箱」として国内特許出願を行ってます。
出願番号 特願2010-182997
出願日  平成22年8月18日
出願人  国立大学法人筑波大学

また特許出願公開され公開特許公報が発行されました。
公開番号 特開2012-039919
公開日  平成24年3月1日
詳細はソーシャルデータベース「astamuse(アスタミューゼ)」で見ることができます。
http://patent.astamuse.com/ja/published/JP/No/2012039919/詳細




巣箱調査のリスクその2

巣箱を襲うのはアオダイショウだけではありません。
カラスが営巣中の巣箱を頑丈なクチバシで突っついて壊し、巣箱内にある卵や雛を食べるそうです。
カラス類による巣箱破壊の経年変化(峯岸2005)
Web資料(峯岸2005)

主に巣箱の巣穴を広げて、巣箱内に頭を入れて捕食するそうです。
キツツキ類も巣箱を利用するために巣穴を広げるそうで、アオゲラが巣穴を広げている映像がアップされています。
投稿者tamaky様 投稿日2010/11/11

過去に巣穴を広げられた巣箱を利用した動物は、さらにテン・イタチ・オコジョ・ネコ等の捕食者に狙われやすくなると思われます。

ネコが巣箱を襲っている映像がアップされています。
投稿者ottacs様 撮影日1997/6/28?

巣穴を広げられない対策としては、巣穴径と同じ穴を開けた厚い板・トタン・アクリル板等を巣穴が開けてある巣箱の面に貼り付ける方法が有効と思われます。

巣箱調査のリスク

以前にアオダイショウの記事を投稿しました。

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アオダイショウは小型哺乳類と鳥類を主食とし、樹上性の傾向が強いとされています。

 

木登り上手なアオダイショウは、まれに巣箱で営巣している鳥やヤマネ・ヒメネズミを襲います。

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You Tubeで巣箱に出入りをするアオダイショウの映像がアップされています。
投稿者 みかげのガーデン「みかげ&yoshi様」撮影日2009/7/8

シジュウカラが営巣していた巣箱を襲うアオダイショウの映像がアップされています。
長野大学「森の生態系サービスの活用を学ぶ環境教育」映像ライブラリー
撮影日2010/6/18


ヘビの来襲を受け、全てのヒナが犠牲になった映像がアップされています。
北軽井沢ネットワーク様の「栗平巣箱カメラ・動画トピックス」
撮影日2009/7/12

ヤマネの調査には巣箱は欠かせません。
しかし巣箱を架けると、カラ類等の樹洞性小型鳥類やヒメネズミ等の小型哺乳類も繁殖場所として利用します。
巣穴を木の幹に向けて巣箱を設置する「イギリス式」の架設方法でも防げません。
巣箱利用動物の同一巣箱の利用時間が長くなると、捕食者に狙われる危険性が高まってしまうのが事実です。

2010年9月12日日曜日

ヤマネ生息調査へのご理解とご協力をお願致します。


















(写真は木製巣箱に入ったヤマネです。)
先月、ヤマネ目撃情報の照会をお願いいたしました匿名希望の方からhttp://www.shigakogen.gr.jp/blog/?p=324#respond
下記のメールをいただきました。
送信者:yamane
日付:2010/08/23 19:32:04
件名:???情報の秘密
本文 「あなたに教えるとyoutube動画のように巣を壊してイジメるは、営巣中を棒でツッツクはで、酷い事この上無しなので教えてやんないよ。皆の森に来ないでね。」
また私が他の方のブログ上でヤマネ目撃情報交換を行った事に関してコメントをいただきました。
コメント内容
「この人に情報を教えると、youtubeでアップした動画に観るように、営巣している巣を掻き分けてイジメるし、繁殖・子育て中の巣を棒でつっついて脅威を与えるは・・・ 研究・調査を名目にして捕獲はするはの酷い始末・・・ 大切で貴重な小さな野生生物はそっとしておきましょう。こういう方の目に触れさせないようにしながら。」Posted by yamane at 2010年08月23日 20:00
お叱りのメール内容ですが、私が以前にツツジの枝先に巣を作ったヤマネの紹介を致したことに対してのお叱りと思います。
投稿記事 自然状態のヤマネの巣http://yamanenoseisokubunpuiki.blogspot.com/2009/08/blog-post.html
上記の動画投稿
投稿記事 ヤマネの自然巣での繁殖http://yamanenoseisokubunpuiki.blogspot.com/2009/08/blog-post_28.html
上記の動画投稿
以前からヤマネが樹洞や野鳥の巣箱、天狗巣病の枝先に巣を作ることか知られていました。
今回はその天狗巣病の枝先にヤマネが巣を作った事例を紹介したものであります。
事例紹介に終わりヤマネの巣へ刺激を与えたことや写真・動画撮影の意図を説明しておりませんでしたので、ここに加筆させていただきます。(ご教示頂いたメールアドレスが不通、たくさんのコメントいただいた折のURLが未添付のため直接返答できませんでしたのでここに加筆の形で回答させていただきます)
確かに営巣中のヤマネの巣を小枝で突っつきヤマネの所在・繁殖を確認し映像に収めたことは、ヤマネ自身の立場からすると大変に脅威であり、可哀想な事を致しました。
このヤマネの巣は歩道沿いに作られていて、地上高1m位の位置に作られていた物です。
巣の存在確認は2009/08/03になされ2009/08/11にヤマネの所在確認を致しました。そして2009/08/28に繁殖確認を致しました。
所在確認でヤマネの巣に刺激を与えてから繁殖確認までの約半月はヤマネは同所に止まり営巣をしていました。
繁殖確認をした後はヤマネは近くに設置をしていた調査用の木製巣箱に幼獣ごと引越し繁殖を終え、ヤマネの子供たちは巣立ちました。
調査用巣箱でヤマネが繁殖していた場合は幼獣の頭数確認と写真撮影をするのみで、ヤマネへの刺激は最小限に留める方針で巣箱調査をしております。
一般的にヤマネが巣を作ったり冬眠する立ち枯れの木は安全管理上伐倒され、天狗巣病に罹った枝先は菌の伝染防止で取り除かれ焼却されます。
しかし人間の都合で処分となる枯死木や罹病枝をヤマネが利用する場合があることの事例紹介の意味で写真・動画撮影をし、情報公開を行いました。
またヤマネの生態調査へのお叱りのコメントもいただきました。http://yamanenoseisokubunpuiki.blogspot.com/2009/04/blog-post_1825.html
「研究・調査を名目にして捕獲はするはの酷い始末」とのご叱責もその通りでございます。
巣箱で捕獲したヤマネはビニール袋やネットに入れ体重測定を致します。
雌雄の判別はヤマネの背中をつかみ肛門と生殖器の位置関係で判定いたします。
ヤマネの生態を調査するためには個体識別で耳介に傷を付けたり穴を開けたり、ICタグを注入器(針の太い注射器)でヤマネの背中に皮下挿入いたします。
しかし上記の内容は文化庁の現状変更許可並びに県の鳥獣捕獲許可を受けての行為であり、ヤマネの生態調査には不可欠の物であります。
これまで何十年と一途にヤマネの研究をされてきた研究者の方のひたむきな努力の結果、ヤマネの生態が少しづつ解明され始め、その方の書籍・文献・講演等で私達はヤマネの知識を与えられております。
1年の約半分を冬眠し夜行性で人目に付かないヤマネですが、Web上での目撃情報を収集しましたところ、意外と多くの方がヤマネを目撃されております。
特に家屋内に入り込むヤマネにつきましてはネズミ捕りによる誤捕殺や、フタの無いゴミ箱・バケツ・浴槽・洋式便器等に落ち込み衰弱死する危険性が高まります。
野外においても巣立ったばかりの亜成獣が地面・道路に衰弱して動けない例や、春先の気温変動により雪上で休眠しているヤマネが発見されております。
ヤマネの生息情報の公表は多くの方とヤマネが以外にも身近に生息していることの共通認識につながればと思います。
上記の内容でヤマネ目撃情報の募集と生息分布図作成・公開、ヤマネ生息調査へのご理解とご協力がいただけるかは不明ですが、今後ともご叱責のメール・コメントを頂ければ幸いです。
以上長文で失礼を致しました。

2009年10月14日水曜日

ヤマネの天敵

今週は朝の冷え込みが0℃近くになり、いよいよ冬間近って感じの今日この頃です。


そんな折にヤマネの天敵でもあるアオダイショウの姿を見かけました。


動画でも撮影してあります。
目撃地点は山林近くの舗装道路上です。
取り立てて珍しくもないアオダイショウですが、ここ1400m近い高原では余り頻繁には見かけないモノです。
カメラを向けるとアオダイショウはそそくさと逃げ出し、近くの木に登りだしました。
京都府レッドデータブックにアオダイショウは「小型哺乳類と鳥類を主食とする。樹上性の傾向が強い」とあります。
どうりで木登りが上手なわけです。
正しくヤマネ・ヒメネズミの様な樹上に活動範囲を持つ小型哺乳類の天敵であり、実際に「アオダイショウによるヤマネの捕食記録」(林ら,1996 栃木県立博物館研究記要第13号)で事例が報告されてます。
一部を紹介しますと「1995年9月栃木県北部で行われた爬虫両生類相調査の際に、採集したアオダイショウの腹部より、捕食されたヤマネの成獣1頭と幼獣7頭が確認された」とあります。
日内休眠をするヤマネはアオダイショウの格好の獲物なのかもしれません。
食物連鎖の一事例だと思いますが、ヤマネを調査している者にしてみると複雑な想いです。

2009年8月28日金曜日

ヤマネの自然巣での繁殖




 自然の巣の中にいたヤマネがその後どうなったのか?、半月ほどたってから再び観察をしてみました。
(8月11日撮影) 

(8月28日撮影)

 前回同様に枯れ枝で巣材を少し掻き出し中の様子をうかがったところ成獣のヤマネが姿を現し、更に繁殖していて4頭の幼獣が姿を現しました。
 動画も撮影してGoogleYouTubeにアップしてあります。

 中島福男先生の著書「日本のヤマネ」(2001.信濃毎日新聞社)の冒頭写真に、ヤマネの「仔の成長記録」として出産直後~生後23日目の幼獣の写真が掲載されています。

 それと比べると今日のヤマネの幼獣は、生後12~14日目くらいの大きさかと思います。

 お盆の頃に生まれたヤマネですが、冬眠に入る晩秋まで約20g以上の体重増加が出来るのか?と少し心配になってしまいました。

2009年8月12日水曜日

自然状態のヤマネの巣

今年度からの新規巣箱調査ルートの途中にヤマネの巣がありました。
発見者は卒論でヤマネ調査を行っている学生のT.Eさんで、8/3の調査時に天狗巣病に罹ったツツジの枝で見つけられました。




発見場所は北西斜面の天然性二次林の所で、標高は約1700mの地点です。

後日8/11に写真撮影をする機会があり、ヤマネの集めたコケ巣材で出来たソフトボール大の巣を小枝で突っついてみました。
そうしたら内部で反応があり、ヤマネが顔を出しました。



ヤマネは「何事か?」って感じで顔を出しますが、すぐに顔を引っ込めます。


再び巣材をかき分けると「うるさい!!」って感じでまた顔を出します。





約2分弱の動画を撮影しましたのでgoogle YouTubeにアップしてあります。
少し手前の地点ではネズミ?が作ったと思われる枯草で出来た自然巣もありました。








ヤマネ・ネズミ共に1m弱位の高さのところに作ってあり、球形の形は似てても巣の材料は大分違う物です。