2011年4月13日水曜日

塩ビ管巣箱のこれから

塩ビ管巣箱は軽くコンパクトで取扱がよく、材料単価も安価で耐久性もありますので、ヤマネ生息調査に有効だと思われます。
ダム・道路等の建設工事の際の環境アセスメント並びに、道路が通ってない奥山等でのヤマネ生態学術調査に是非使用していただければと思います。

塩ビ管巣箱を関係各所に紹介していたところ、群馬県立尾瀬高等学校自然環境科の生徒さんから導入希望の意向を伺い、塩ビ管巣箱のプレゼンをさせていただきました。
尾瀬高等学校では武尊山で環境調査研究活動をされており、2006年からはヤマネの巣箱調査も行っています。

尾瀬高校で調査に使用している巣箱

巣箱を運んでいる様子
(東京農工大学大学院 木村園子ドロテア先生より写真借用)

2011年3月29日に生徒の皆さんにプレゼンしている様子

また文献調査の一環として、ヤマネの目撃情報をGoogle map上で分布図にしていますが、

ヤマネの生息確認がされていない地域において、是非塩ビ管巣箱で生息調査を行っていただければと思います。

上記の塩ビ管巣箱は「小型ヤマネ科動物用巣箱」として国内特許出願を行ってます。
出願番号 特願2010-182997
出願日  平成22年8月18日
出願人  国立大学法人筑波大学

また特許出願公開され公開特許公報が発行されました。
公開番号 特開2012-039919
公開日  平成24年3月1日
詳細はソーシャルデータベース「astamuse(アスタミューゼ)」で見ることができます。
http://patent.astamuse.com/ja/published/JP/No/2012039919/詳細



塩ビ管巣箱を使用してみて

塩ビ管巣箱を林内に架設した様子


塩ビ管巣箱を開けた様子

巣材を半分取り除いた様子

巣材を全部取り除いた様子

動画はYouTubeで見られます。

ヤマネが塩ビ管巣箱に出入りしている様子はこちらの動画で見ることができます。

塩ビ管巣箱を目線と同じ高さに架設することで、観察しやすくなります。
倒木・落枝等でまれに架設した塩ビ管巣箱が壊れることがあります。
しかしその場で塩ビ管とツーバイフォー材をつないでいる結束バンドと支え棒を交換するだけで元に戻ります。

上記の塩ビ管巣箱は「小型ヤマネ科動物用巣箱」として国内特許出願を行ってます。
出願番号 特願2010-182997
出願日  平成22年8月18日
出願人  国立大学法人筑波大学

また特許出願公開され公開特許公報が発行されました。
公開番号 特開2012-039919
公開日  平成24年3月1日
詳細はソーシャルデータベース「astamuse(アスタミューゼ)」で見ることができます。
http://patent.astamuse.com/ja/published/JP/No/2012039919/詳細


塩ビ管巣箱の特徴

塩ビ管巣箱の特徴は、板材を組上げた巣箱と違い「釘・木ネジ」を使用していないことです。

塩ビ管巣箱組立に必要な部材・道具

簡単に組み立てることが出来ますので、巣箱調査地までコンパクトに資材を運び、組立・架設が出来ます。

市販の木製巣箱と3個分の塩ビ管巣箱の部材の容積比較。

塩ビ管直径が異なるサイズの塩ビ部材は重ねて運べます。
サイズS 容積200cc 重さ190g
サイズM 容積350cc 重さ250g
サイズL 容積500cc 重さ300g
塩ビ管巣箱3個分の重量は、大きい木製巣箱と同じくらいの重量になります。

サイズSの塩ビ管巣箱を利用したヤマネ

木製巣箱との巣箱利用率を比較したところ、ヤマネは塩ビ管の素材や大きさも気にせず、木製巣箱と同率の利用が確認されました。
日本生態学会第57全国大会(2010年3月、東京)講演要旨


上記の塩ビ管巣箱は「小型ヤマネ科動物用巣箱」として国内特許出願を行ってます。
出願番号 特願2010-182997
出願日  平成22年8月18日
出願人  国立大学法人筑波大学

また特許出願公開され公開特許公報が発行されました。
公開番号 特開2012-039919
公開日  平成24年3月1日
詳細はソーシャルデータベース「astamuse(アスタミューゼ)」で見ることができます。
http://patent.astamuse.com/ja/published/JP/No/2012039919/詳細




ヤマネ生息調査用の巣箱開発

2006年からヤマネ生息調査用の巣箱開発を行っています。
ヤマネを狙う捕食者による齧破を防ぎ、巣穴からの進入を困難にした巣箱です。

開発した「塩ビ管巣箱」















塩ビパイプとVUキャップを巣箱本体に使用し、耐久性を向上させ、捕食者による巣箱破壊の危険性を低減した巣箱です。
巣穴はツーバイフォー材(厚さ38mm)の木口に開け、簡単には広げられないようにしてあります。
巣箱自体が軽量(300g)でコンパクト(容積500cc)のため、取り付ける樹木に負担が無く、取り付け用の被覆針金も1本で済みます。

塩ビ管巣箱を開けた状態
















巣箱を開けると、コケ類・樹皮の巣材が入っています。
巣穴はツーバイフォー材の中で直角に屈曲しています。

上記の塩ビ管巣箱は「小型ヤマネ科動物用巣箱」として国内特許出願を行ってます。
出願番号 特願2010-182997
出願日  平成22年8月18日
出願人  国立大学法人筑波大学

また特許出願公開され公開特許公報が発行されました。
公開番号 特開2012-039919
公開日  平成24年3月1日
詳細はソーシャルデータベース「astamuse(アスタミューゼ)」で見ることができます。
http://patent.astamuse.com/ja/published/JP/No/2012039919/詳細




巣箱調査のリスクその2

巣箱を襲うのはアオダイショウだけではありません。
カラスが営巣中の巣箱を頑丈なクチバシで突っついて壊し、巣箱内にある卵や雛を食べるそうです。
カラス類による巣箱破壊の経年変化(峯岸2005)
Web資料(峯岸2005)

主に巣箱の巣穴を広げて、巣箱内に頭を入れて捕食するそうです。
キツツキ類も巣箱を利用するために巣穴を広げるそうで、アオゲラが巣穴を広げている映像がアップされています。
投稿者tamaky様 投稿日2010/11/11

過去に巣穴を広げられた巣箱を利用した動物は、さらにテン・イタチ・オコジョ・ネコ等の捕食者に狙われやすくなると思われます。

ネコが巣箱を襲っている映像がアップされています。
投稿者ottacs様 撮影日1997/6/28?

巣穴を広げられない対策としては、巣穴径と同じ穴を開けた厚い板・トタン・アクリル板等を巣穴が開けてある巣箱の面に貼り付ける方法が有効と思われます。

巣箱調査のリスク

以前にアオダイショウの記事を投稿しました。

f:id:TsukubaF3:20091014150356j:image


アオダイショウは小型哺乳類と鳥類を主食とし、樹上性の傾向が強いとされています。

 

木登り上手なアオダイショウは、まれに巣箱で営巣している鳥やヤマネ・ヒメネズミを襲います。

f:id:TsukubaF3:20090630181006j:image

f:id:TsukubaF3:20090630181420j:image

f:id:TsukubaF3:20090630182641j:image

You Tubeで巣箱に出入りをするアオダイショウの映像がアップされています。
投稿者 みかげのガーデン「みかげ&yoshi様」撮影日2009/7/8

シジュウカラが営巣していた巣箱を襲うアオダイショウの映像がアップされています。
長野大学「森の生態系サービスの活用を学ぶ環境教育」映像ライブラリー
撮影日2010/6/18


ヘビの来襲を受け、全てのヒナが犠牲になった映像がアップされています。
北軽井沢ネットワーク様の「栗平巣箱カメラ・動画トピックス」
撮影日2009/7/12

ヤマネの調査には巣箱は欠かせません。
しかし巣箱を架けると、カラ類等の樹洞性小型鳥類やヒメネズミ等の小型哺乳類も繁殖場所として利用します。
巣穴を木の幹に向けて巣箱を設置する「イギリス式」の架設方法でも防げません。
巣箱利用動物の同一巣箱の利用時間が長くなると、捕食者に狙われる危険性が高まってしまうのが事実です。

2010年9月12日日曜日

ヤマネ生息調査へのご理解とご協力をお願致します。


















(写真は木製巣箱に入ったヤマネです。)
先月、ヤマネ目撃情報の照会をお願いいたしました匿名希望の方からhttp://www.shigakogen.gr.jp/blog/?p=324#respond
下記のメールをいただきました。
送信者:yamane
日付:2010/08/23 19:32:04
件名:???情報の秘密
本文 「あなたに教えるとyoutube動画のように巣を壊してイジメるは、営巣中を棒でツッツクはで、酷い事この上無しなので教えてやんないよ。皆の森に来ないでね。」
また私が他の方のブログ上でヤマネ目撃情報交換を行った事に関してコメントをいただきました。
コメント内容
「この人に情報を教えると、youtubeでアップした動画に観るように、営巣している巣を掻き分けてイジメるし、繁殖・子育て中の巣を棒でつっついて脅威を与えるは・・・ 研究・調査を名目にして捕獲はするはの酷い始末・・・ 大切で貴重な小さな野生生物はそっとしておきましょう。こういう方の目に触れさせないようにしながら。」Posted by yamane at 2010年08月23日 20:00
お叱りのメール内容ですが、私が以前にツツジの枝先に巣を作ったヤマネの紹介を致したことに対してのお叱りと思います。
投稿記事 自然状態のヤマネの巣http://yamanenoseisokubunpuiki.blogspot.com/2009/08/blog-post.html
上記の動画投稿
投稿記事 ヤマネの自然巣での繁殖http://yamanenoseisokubunpuiki.blogspot.com/2009/08/blog-post_28.html
上記の動画投稿
以前からヤマネが樹洞や野鳥の巣箱、天狗巣病の枝先に巣を作ることか知られていました。
今回はその天狗巣病の枝先にヤマネが巣を作った事例を紹介したものであります。
事例紹介に終わりヤマネの巣へ刺激を与えたことや写真・動画撮影の意図を説明しておりませんでしたので、ここに加筆させていただきます。(ご教示頂いたメールアドレスが不通、たくさんのコメントいただいた折のURLが未添付のため直接返答できませんでしたのでここに加筆の形で回答させていただきます)
確かに営巣中のヤマネの巣を小枝で突っつきヤマネの所在・繁殖を確認し映像に収めたことは、ヤマネ自身の立場からすると大変に脅威であり、可哀想な事を致しました。
このヤマネの巣は歩道沿いに作られていて、地上高1m位の位置に作られていた物です。
巣の存在確認は2009/08/03になされ2009/08/11にヤマネの所在確認を致しました。そして2009/08/28に繁殖確認を致しました。
所在確認でヤマネの巣に刺激を与えてから繁殖確認までの約半月はヤマネは同所に止まり営巣をしていました。
繁殖確認をした後はヤマネは近くに設置をしていた調査用の木製巣箱に幼獣ごと引越し繁殖を終え、ヤマネの子供たちは巣立ちました。
調査用巣箱でヤマネが繁殖していた場合は幼獣の頭数確認と写真撮影をするのみで、ヤマネへの刺激は最小限に留める方針で巣箱調査をしております。
一般的にヤマネが巣を作ったり冬眠する立ち枯れの木は安全管理上伐倒され、天狗巣病に罹った枝先は菌の伝染防止で取り除かれ焼却されます。
しかし人間の都合で処分となる枯死木や罹病枝をヤマネが利用する場合があることの事例紹介の意味で写真・動画撮影をし、情報公開を行いました。
またヤマネの生態調査へのお叱りのコメントもいただきました。http://yamanenoseisokubunpuiki.blogspot.com/2009/04/blog-post_1825.html
「研究・調査を名目にして捕獲はするはの酷い始末」とのご叱責もその通りでございます。
巣箱で捕獲したヤマネはビニール袋やネットに入れ体重測定を致します。
雌雄の判別はヤマネの背中をつかみ肛門と生殖器の位置関係で判定いたします。
ヤマネの生態を調査するためには個体識別で耳介に傷を付けたり穴を開けたり、ICタグを注入器(針の太い注射器)でヤマネの背中に皮下挿入いたします。
しかし上記の内容は文化庁の現状変更許可並びに県の鳥獣捕獲許可を受けての行為であり、ヤマネの生態調査には不可欠の物であります。
これまで何十年と一途にヤマネの研究をされてきた研究者の方のひたむきな努力の結果、ヤマネの生態が少しづつ解明され始め、その方の書籍・文献・講演等で私達はヤマネの知識を与えられております。
1年の約半分を冬眠し夜行性で人目に付かないヤマネですが、Web上での目撃情報を収集しましたところ、意外と多くの方がヤマネを目撃されております。
特に家屋内に入り込むヤマネにつきましてはネズミ捕りによる誤捕殺や、フタの無いゴミ箱・バケツ・浴槽・洋式便器等に落ち込み衰弱死する危険性が高まります。
野外においても巣立ったばかりの亜成獣が地面・道路に衰弱して動けない例や、春先の気温変動により雪上で休眠しているヤマネが発見されております。
ヤマネの生息情報の公表は多くの方とヤマネが以外にも身近に生息していることの共通認識につながればと思います。
上記の内容でヤマネ目撃情報の募集と生息分布図作成・公開、ヤマネ生息調査へのご理解とご協力がいただけるかは不明ですが、今後ともご叱責のメール・コメントを頂ければ幸いです。
以上長文で失礼を致しました。